予感

さだまさし( 佐田雅志 ) 予感歌詞
1.片恋

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

こんなに恋しくても
届かない心がある
こんなに苦しくても
言えない言葉がある
ときめいて あこがれて
聞こえない声で叫んでいる
あなたに届け いつかいつの日か
あなたに届け せめてそのかけらでも

こんなに寒い朝も
温かい恋がある
こんなに悲しくても
口ずさむ歌がある
ひたむきに ひたすらに
あなたを思う夢がある

あなたに届け いつか蒼空に
あなたに届け 歌よ伝えてよ
あなたに届け いつかいつの日か
あなたに届け せめてそのかけらでも

こんなに恋しくても
届かない心がある
こんなに悲しくても
口ずさむ歌がある


2.その橋を渡る時

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

もしも僕がその橋を渡るなら
何も迷わずに胸を張って渡る
もしもその橋を叩くくらいなら
僕にその橋を渡る資格はない
Rubicon river
その河を 河を渡るとはそういうことなのだ
Rubicon river
決心とは 賽を投げるとはそういうことなのだ

渡った先での不安におののくなら
僕は水の色を眺めて死ぬが良い
永遠にこの河を眺めるだけの方が
幸せだという人生だってある
Rubicon river
生きるとは 生きることとはそういう物なのだ
Rubicon river
幸せとは 幸せとはそういう物なのだ

もしも僕がこの橋を渡る時
必ず一度は振り返ると思う
置き去りにするものを自分に刻むために
そしてもう二度と戻らないために
Rubicon river
その河を 河を渡るとはそういうことなのだ
Rubicon river
決心とは 賽を投げるとはそういうことなのだ
Rubicon river
生きるとは 生きることとはそういう物なのだ
Rubicon river
幸せとは 幸せとはそういう物なのだ


3.何もなかった

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

村の入り口には紅い花が咲いてる
昔から咲く本当の名前は知らない
今は誰も憶えてなどいないんだ
もう今は誰も知らない

昔 戦があった時 花は一度枯れたけど
今は見渡すかぎり赤い絨毯のように
何もなかったかのように咲いてる
そう何もなかったかのように

人は皆 花の美しさに酔い
かなしい時代は忘れたようだ
父を母を兄を友を失ったあの戦や
最後に全て焼き尽くしたあの光さえも

何もかも綺麗さっぱり 忘れてしまう幸せの中で
みんな暮らしてるこの村では
あの時何も起きなかった そうつまり
何もなかった

村の入り口には小さな石の仏が立ってる
昔からある仏の名前は知らない
今は誰も憶えてなどいないんだ
もう今は誰も知らない

忘れてはいけない事と忘れてもかまわない事の
境目でいつもうろたえている
大切な事ほど忘れ
忘れたい事ほど忘れられない

花の色はいつか移ろう
楽しい時ほど早く過ぎゆく
父を母を兄を友を奪われたあの時
さしのべられた誰かの手の温もりでさえも

何もかも綺麗さっぱり 忘れてしまう幸せの中で
みんな暮らしてるこの村では
あの時何も起きなかった そうつまり
何もなかった

村の入り口には紅い花が咲いてる
昔から咲く本当の名前は知らない


4.つくだ煮の小魚

作詞:井伏鱒二
作曲:さだまさし

ある日 雨の晴れまに
竹の皮に包んだつくだ煮が
水たまりにこぼれ落ちた
つくだ煮の小魚達は
その一ぴき一ぴきを見てみれば
目を大きく見開いて
環になつて互にからみあつてゐる
鰭も尻尾も折れてゐない
顎の呼吸するところには 色つやさへある
そして 水たまりの底に放たれたが
あめ色の小魚達は
互に生きて返らなんだ


5.思い出暮らし

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

あの頃は良かったなんて 口に出して言うもんじゃないよ
多分思い出の良いとこだけを「あの頃」と呼びたがる
「もしかしてあの時」なんて
逃げ込みたくもなるけど 待って
それで上手くいかないことだけに
「もしも」を押しつける
誰だって思い出暮らしの方が良いさ
良いことだけならね
霞でも食って 鏡見ないで
歳だけ取って バカに笑って
生まれて生きて死ぬだけなんだったらそれも良い
未来は悪い事だけ
連れてくるもんだなんて怯えるなんて
後ろ向きの思い出暮らしにはまだまだ若すぎる

記憶の中だけのヒーロー セピア色の自分伝説
そんなモン早く捨てちまって たかだかの僕になれ
傷口から腐るあいつ 傷口から強くなるあいつ
一つだけ胸に刻みたい 僕らは今を生きる
誰だって思い出暮らしの方が良いさ
嫌なことから逃げて
心を開いて 心で見て
受け止めたい 生命の理由(わけ)
折角生まれて生きているんだったら勿体ない
あの頃は良かったはず 永遠に過去は美しい
後ろ向きの思い出暮らしなどまだまだ早すぎる

あの頃は良かったなんて 口に出して言うもんじゃないよ
多分思い出の良いとこだけを「あの頃」と呼びたがる


6.冬薔薇(ふゆそうび)

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

カフェラテ越しに不意の別れ告げる君の向こうで
ベビーピンクの真冬の薔薇 風もなくゆらり揺れた
読みかけの物語に残された数ページ
手に汗握るまさかの展開には声もない
ミステリーなら最後のどんでん返しが
待ち構えてるんだけど

読み落としてた大切な君の心の傷を
もう一度君の美しい笑顔を温めるために
私を助けてという君の声が聞こえる
僕の細胞は全て君で出来てたと気づいた
口先だけの言葉じゃない こころで守ってゆくから

まだ僕にロスタイムが残されているのなら
どんでん返しの瞬間に運命を賭けるつもり

カフェラテ越しに不意の別れ告げる君の向こうで
ベビーピンクの真冬の薔薇 風もなくゆらりゆらり
ゆらりゆらり揺れた


7.私は犬に叱られた

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

犬に叱られた夢を見た
君ら人間は少し思い上がっているんじゃないかって
何の役にも立たぬ死に様を犬死になんて
軽々しく言うんじゃないと本気で怒ってた

犬に叱られた夢を見た
君ら人間は少しのぼせ上がっているんじゃないかって
散々人に迷惑かけて死ぬことを
これからは人死にと呼ぶことにするがいいって

飼い犬に手をかまれるなどと平気で言うけど
飼い主に殺される犬の方が多いくらいだ
言っておくが別に猿とは仲も悪くないし
負けて遠吠えするのは君らじゃないかって
もっともだ もっともだ

犬に叱られた夢を見た
君らの前頭葉が発達した訳は
犬が臭いの部分を受け持ってやったからだ
君らに知恵を持たせてやった感謝を忘れてるって

犬に叱られた夢を見た
花咲か爺から桃太郎まで面倒見たのに
猫と違って泥棒もせず恨んで化けもせず
救助や介助やおまわりさんまで務めてきたのに

第一 人も食わぬ夫婦喧嘩やなんかを
犬が食わぬのは当たり前のことだろう
それより犬も歩けば棒に当たると言うけど
それの何処が幸せなのか説明してみろって
もっともだ もっともだ

犬に叱られた夢を見た
犬死になんて軽く言うなと叱られた
もっともだ もっともだ


8.茨にもきっと花咲く

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

おめでとう 旅立ちだね
若い分きっと辛い道のりだろう
負けないで負けないで負けないで
意地を張って無理などし過ぎないように
季節(とき)は今 君はあの若緑色に
眩しく染まりながら歩いてゆく
君の征く茨の道に祝杯を挙げよう
転んでも笑って立ち上がれるよう
おめでとう 旅立ちだね
忘れないで 茨にもきっと花咲く

おめでとう 旅立ちだね
下手くそで良い君だけの道を征け
挫けるな挫けるな挫けるな
次に会うとき君は今より素敵だろう

いつまでも自分を若いと思わぬよう
いつまでも心は若く居られるよう
いつか花を懐かしむとき 信じたその道を
自分で褒めることが出来るよう
おめでとう 旅立ちだね
信じて良い 茨にもいつか花咲く
おめでとう 旅立ちだね
忘れないで 茨にもきっと花咲く


9.静夜思

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

ゆうらりと山際に のぼり来る十三夜
薄絹をまとふ如く 銀色(しろがね)に光降る
風も無き雲路に 静静心細く
思ひ出の縁取りの ほつれゆく音のあはれ
ふるさとは既に遠く 日ぐれて尚 道遠し
たおやかな 月の光に 知らず知らず涙零る
未だ見ず流星の 落ちゆく 昊(そら)の涯
独り寝の窓辺に聴く 君を恋うる歌

オルフェウス 或いはセレネの母 ティアの形見
一年に4センチ 遠ざかりゆく恋
ふるさとは遙か遠く 日ぐれて尚 道遠し
振り向けば かくも長き 迷い道に 人も絶へ
君知るや言の葉に 尽きせぬ恋の行方
ゆうらりと山際に のぼり来る十三夜


10.予感

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

季節が変わるように
静かに押し寄せる波が
沁みるようにあなたで
満たされてゆく予感
八重山吹の花が
香るように風に揺れた
その坂道をあなたが歩いてくる
いつしかあなたに恋をした
遅咲きの花のように
気づいてもらえないかも知れないけど
小さく咲いたから
しあわせ しあわせ

朝焼けの水際に
光が満ちるように
ゆっくりとあなたに
染まりはじめる予感
ときめきを数えれば
悲しみが始まるから
この坂道を一人で歩いて行く
いつしかあなたに恋をした
遅咲きの夢のように
あなたに届かないかも知れないけど
小さく咲いたから
しあわせ しあわせ
しあわせ